☎080-6148-4095

【香西歴史探訪 Vol.4】


白峯と根香のへんろ道 〜弘法大師の足跡をたどる遍路古道〜

■ 四国遍路、もうひとつの入口——香西の古道へ

「遍路(へんろ)」と聞くと、多くの人が白装束の巡礼者が歩く姿や、八十八ヶ所をめぐる長旅を思い浮かべるかもしれません。しかし実は、香西の地にも四国遍路と深くつながる“もうひとつの入口”があるのです。

その道こそが、「白峯(しろみね)」と「根香(ねごう)」を経由する古の遍路道。
かつては、高松市中心部から西へ向かう巡礼者たちが通った重要なルートであり、多くの“お遍路さん”がこの地を歩いたとされています。


■ 白峯の霊場と弘法大師の伝承

白峯とは、香西町から南西方向にある標高295mほどの山。古くは「白峯寺(しろみねじ)」のある聖地として知られ、四国八十八ヶ所霊場の第81番札所として現在も多くの参拝者を迎えています。

白峯寺には、弘法大師・空海が修行したとの言い伝えがあり、その名は「大師ゆかりの山」として古くから崇敬されてきました。

実はこの白峯への参詣ルートの一部が、香西の山沿い「根香」地区を通っており、そこには今も“へんろ道”の石標や古道が断片的に残されています。


■ 根香のへんろ道:失われた古道の記憶

「根香(ねごう)」という地名は、地元でもやや馴染みの薄い場所かもしれません。しかし、ここはかつての山辺道(やまべのみち)と呼ばれる、山裾を縫うように通る古道の一部でした。

このルートは、讃岐国府方面から白峯へと向かう遍路道の中継地とされ、地元の人々が遍路にお接待をしていた記録も残っています。

現在では一部の道は舗装され、住宅や畑に姿を変えましたが、それでも地元の石垣や細道の隙間に、往時の面影を垣間見ることができます。


■ 弘法大師と香西——地域に根づく信仰の形

弘法大師・空海は、言わずと知れた真言宗の開祖であり、四国遍路の精神的支柱ともいえる存在です。

香西の地にも「法力不動尊」や「香西寺」など、大師ゆかりの仏堂が点在しており、これらの場所が遍路道と結びついていたと考えられています。

また、白峯寺にはかつて香西氏の祈願所としての役割もあり、中世には地元領主や庶民の信仰が集まる拠点でもありました。
つまり香西という地域は、“地元民の信仰”と“遍路の旅人の信仰”が交差する交差点でもあったのです。


■ 現代に息づく“歩く文化”

今も地元の人々の中には、「昔はうちの祖母が“お遍路さん”にお茶を出していた」というような記憶を語る人もいます。

便利な交通手段が発達した現代においても、春や秋には遍路装束の旅人がこの一帯を歩く姿が見られます。
時代が変わっても、“歩くことで何かを見つける”という巡礼の本質は、静かにこの地に残っているのです。


🏞️ ご案内メモ

  • 白峯寺(第81番札所):香川県坂出市青海町2635
  • 根香の旧遍路道入口(推定):高松市香西南町〜塩江街道へと接続
  • アクセス:香西駅より車で約15〜20分(白峯寺)、徒歩ルートも一部整備あり
  • 見どころ:古道跡、石標、寺院、周辺の里山風景

🌿まとめ

白峯と根香を結ぶ遍路道は、今ではほとんど忘れられかけた存在かもしれません。
しかしその道は、旅人の祈りと地元のぬくもりが交わる大切な“文化の道”でした。

香西という町の中に、こうした“歩く信仰”の痕跡が残されていることは、まさにこの土地の豊かさを象徴しているのではないでしょうか。

日々の喧騒を離れ、ちょっとだけ足元を見つめながら、この古道をたどってみるのも、きっと心の旅になるはずです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です